温泉は気持ちいい。手足を伸ばしてゆっくりとじっくりとお湯に浸かっていると、ふぅ〜っとため息がでるほどリラックスできる。温泉に行く目的は人によって違うだろう。精神的にリラックスしたい人、行楽ついでに疲れを癒したい人、病気や怪我を治癒しに湯治する人、ただ単に体の汚れを落とすためにお風呂として使う人など、とても様々だ。目的はみんな様々なだけに、予期しない体調不良に遭遇することもある。それが「湯あたり」や「のぼせ」だ。よく脱衣所にも「湯あたり注意」とか「のぼせやすいので長湯は禁止」などと書かれた注意書きを目にすることがある。そもそも「湯あたり」って何なんだろう? そんなわけで今回はこの「湯あたり」や「のぼせ」について調べてみた。
調べてみると、温泉に入って出くわす体調不良にはいくつか種類があることがわかった。それは「湯あたり」「のぼせ」「湯疲れ」だ。
どれも同じ現象で言い回しが違うだけかと思いきや、それぞれ特徴や症状が違っていて、それぞれ要因や対策が異なるようだ。
まずはその種類の違いについてまとめてみよう。
【意味合いの違いと症状】
- ■湯あたり
- 温泉には普通のお湯には無い様々な物質が含まれています。ナトリウムやマグネシウム、硫黄や鉄分など、温泉分析表に書かれているアレですよね。その様々な成分が体に作用して、病気や怪我の治癒に利用されているわけですが、どんな薬でも症状に合わせて飲むのと同じことで、薬の副作用のように温泉成分による体調に変化が現れるのです。なので「湯あたり」とは温泉特有のもので、普通のお風呂に入って体調が悪くなっても「湯あたり」とは呼ばないそうです。また、長期的に温泉に浸かったりしないとこの症状は現れないそうで、一泊や二泊程度の旅行では「湯あたり」は発症しないとのこと。また、その症状も発熱や下痢、嘔吐など様々。しかし、これは体質が泉質と合わないために起こる場合と、治癒に向かう過程で発生する好転反応の場合とあるようです。
- ■のぼせ
- いつものお風呂と違って温泉は気持ちいい。特に露天風呂から眺める景色がとても良かったり、大きな窓から眺める庭園が開放的だったり、静かで非日常的な雰囲気がとても心地よかったりと、ついつい長く湯に浸かってしまったことにより発生するのが「のぼせ」。要は暖かい温泉に長く浸かってしまうことで、湯だってしまい、体が温まりすぎて「顔の火照り」や「頭痛」「めまい」「吐き気」などを引き起こしてしまうことです。夏場の熱中症にも似たような症状で、血流の増加や血管の拡張が要因となるもの。これは温泉に限ったことではなく、銭湯や沸かし湯、自宅のお風呂でも起こること。
- ■湯疲れ
- 普段の風呂はサッと湯に浸かるかシャワーで済ませてしまうことが多い人でも、温泉に行くとついつい長く浸かってしまう。温泉街にある共同湯をめぐってみたり、旅館にたくさん浴場があると全部制覇してみたくなったりと、旅先ではついついテンションがあがって温泉に何度も入ってしまう。また、せっかくの温泉旅行なのだから、じっくりと何度も温泉に浸かろうと足しげく浴場に向かったりとしてしまう。そんな、いつも慣れていない行動をすることによって引き起こしてしまうのが「湯疲れ」。入浴というのはとても体力を消費します。1回20分の入浴で40kcalほど消費し、反復浴をするとさらに消費カロリーは増え、また、湯めぐりのために歩き回ったりしたりするとかなりの体力消耗につながる。つまり旅行により逆に疲労が溜まってしまうこと。
なるほど、それぞれ境遇や行動によって引き起こされる症状が違うわけだね。せっかくの楽しい旅行も、これらのトラブルと遭遇してしまうと、台無しになってしまう。まぁ、それも思い出のひとつ、笑い話のネタになればいいけど、取り返しのつかないことになりかねないので、注意が必要です。
では、これらのトラブルに遭わないようにするにはどんな対策が必要なのかをまとめてみよう。
【対策方法】
- ■長く浸かり過ぎない
- 特に熱い湯に長く浸かるのは体力消耗だけでなく、血流の増進により「のぼせ」の原因になってしまうので避けよう。体が温まってきて、汗がにじむようになってきたら湯舟からあがって冷まそう。露天風呂のある浴場などは、ベンチなどを用意してあるところもあるので、一旦休息をするなど分割入浴をするのがいいだろう。ただ、冷ましすぎて「湯冷め」を起こしてしまわないように気をつけて。
- ■水分補給
- 入浴では思っている以上に汗をかくもの。入浴前、そして入浴中にもできるだけ水分補給をすること。浴場の隅や脱衣場に給水器を用意しているところも多いので、こまめに水分が取れればなおよし。それだけでも体は温度調節ができるようになるとのこと。
- ■プログラムを参考に
- クアハウスや健康ランドのような温泉施設には入浴方法が書かれたプログラムを用意していることも多い。これは適当に書かれているのではなく、医学的な効果を期待して書かれているものなので参考にしよう。様々な効果浴を適度な時間でこなすことで、疲労を軽減し、余計なトラブルも回避できることでしょう。
- ■脱衣所の注意書きを読む
- その温泉の泉質や特有の効能によっても対処方法は変わってくるもの。特に成分の濃い温泉や特異な効能を持つ温泉場には、必ずといっていいほど脱衣場に注意事項が書かれている。「1回の入浴は10分まで」とか「最初はぬるい湯舟から入ること」、「掛け湯は必ずすること」など、脱衣所に書かれている張り紙は単なる小言でもおせっかいでもなく、その温泉地が長年培ってきた知恵の現われなので、無視せずそれを守ることが大事です。
- ■連泊の初日は長湯しない
- どんなにいい薬でも、その用法を守らないと害があるのと同じで、温泉も硫黄泉や放射能泉などは特に刺激が強いので、湯あたりを起こしやすいもの。湯治目的で訪れる際などは、初日は短めに数回程度の入浴にして、徐々に体を慣らしていく必要がある。4〜5日した頃に湯あたりの症状が出るようだったら一旦入浴は控えて体を休ませること。確かに湯治場にはそのような注意書きが書かれているケースが多いので納得。
【具合が悪くなったら】
それでも実際に具合が悪くなってしまったら、直ちに対処しましょう。無理をするのはとても危険です。まずは冷やしすぎないように注意しながら横になるなどしっかりと体を休ませること。のぼせたからと、水風呂に入るのは拡張した血管が急に引き締まり、血流が悪くなったり血圧が高くなるので注意。まずは安静にすること。また、自分ではなくても周りの他人が体調不良を訴える場合もある。そんなときは慌てずに対応すること。それから素人判断は禁物。ヤバイなと思ったら宿や施設の人に伝えて医療機関を受診するなど適切な対応をしてもらうようにしましょう。
まとめ:
せっかくの楽しい温泉旅行。最後まで家にたどり着くまでが温泉旅行です。気持ちよくすっきりとリラックスして過ごすためにも、無理は禁物。計画的に行動するようにしましょう。
参考資料:
環境省「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」 (https://www.env.go.jp/nature/onsen/index.html)