温泉は旅の醍醐味。長旅の疲れを癒し、日常の喧騒を忘れ、のんびりと過ごしたい。また、日常的に温泉を楽しむ方も、日々の疲れを癒して健康的な暮らしをしたい。温泉は健康的でとても有意義なものなのではあるけど、ときに我々の脅威になることもある。そのひとつに「レジオネラ菌の発生」がある。たまに、「どこどこの温泉でレジオネラ菌による感染があった」なんて話を聞くことがある。楽しみに訪れた温泉施設が、レジオネラ菌の発生で営業停止になっていたこともあった。それどころか、近所にあったスーパー銭湯と温泉施設が、レジオネラ菌の発生によって廃業してしまったこともあった。何か恐ろしい病気のようではあるが、それがいったい何なのかよくわからない。というわけで、今回は「レジオネラ菌」について調べてみることにしょう。
そもそも「レジオネラ菌」って何なのか、Wikipediaで調べてみると、以下のように書かれている。
レジオネラ (Legionella) は、レジオネラ属に属する真正細菌の総称であり、グラム陰性の桿菌。レジオネラ肺炎(在郷軍人病)等多くのレジオネラ症を引き起こす種を含む。少なくとも46の種と、70の血清型が知られている。通性細胞内寄生性菌である。
何だか難しいことが書かれているが、細菌の一種ということである。この細菌が温泉施設などで大量発生して、我々人間が細菌感染症にかかることを「レジオネラ症」と呼ぶようだ。
【レジオネラ症発生の仕組み】
では、そのレジオネラ症はどうやって引き起こされるのだろうか。その仕組みは、空気中に漂う微小な液体の粒子を「エアゾル【aerosol】」といって、菌を含んだそのエアゾルが肺に入って感染するとのこと。温泉施設にはシャワーや打たせ湯、その他水しぶきや霧、それに湯けむりなど、エアゾルが大量に発生しているので、レジオネラ菌が発生するとほぼ避けることができない模様。
ただ、菌を含んだエアゾルを呼吸器からの肺へ取り込むことによって感染するようだけど、菌だけが浮遊することはなく、空気感染はしないとのこと。また、菌のいる水を飲んでも感染するというわけでもないとのこと。
【レジオネラ症に感染すると】
この菌に冒されると、発熱や悪寒、呼吸困難などの症状が現われ、また筋肉痛や呼吸時の痛みを伴う場合もあるとのこと。このレジオネラ菌による症状は大きく2つに分けられ、重度の肺炎を引き起こしてしまう「レジオネラ肺炎」と、一過性で軽微な「ポンティアック熱」とがあるとのこと。中高年の男性や抵抗力の弱い子供で発症しやすいとのこと。
重度の肺炎の場合、発生者の15〜30パーセントが死に至ってしまうというとても恐ろしい病気で、国内では毎年60名近くの人が亡くなってしまっているとのこと。意外と身近な死の病気のようだ。
感染してしまったら、抗生物質による治療が必要なのだそう。
【レジオネラ菌はどこからくるのか】
そんなに恐ろしいレジオネラ症だけど、なぜ温泉施設で発生するのだろうか。その菌はどこからやってくるのだろうか。
レジオネラ菌そのものは、一般的な土壌、河川や湖沼など、自然の環境に広く生息している存在で、むしろどこにでもある細菌なのだそう。雨上がりの道端、アスファルトの水溜りでもレジオネラ菌は増殖するのだそう。
そんな一般的な細菌だけど、増殖に適した温度が25〜43度とのことで、まさに風呂などの入浴温度が増殖しやすい条件になっているのだ。
【レジオネラ菌の対策】
では、そのレジオネラ菌の増殖を防ぐためにはどうすればいいのか。レジオネラは比較的高温には強い細菌だけれども、70度以上の高温になると1分以内に死滅するとのこと。だけど、湯舟の温度を70度以上にするわけにはいかないので、これは難しい。そうなると、消毒するのが一番てっとり早い。どこの入浴施設でも塩素や次亜塩素酸塩などによる消毒が行われているようだけど、実はレジオネラ菌はそれだけでは足りないようだ。それというのも、レジオネラ菌は特定の種類のアメーバに寄生して、そのアメーバの細胞内で増殖するとのこと。入浴施設に生息しているアメーバは、「ヌメリ」と考えると理解しやすいだろう。配水管や湯舟の底や壁などがヌルッとすることがあるけど、それはアメーバなどの原生生物だったりする。レジオネラ菌はそのアメーバの細胞内に隠れているので、いくら消毒してもレジオネラ菌に直接触れることがなく、菌は死滅しないというのだ。ということで、レジオネラ菌を防ぐには、定期的な清掃と消毒といった徹底した管理が必要とのこと。我々利用者側で何とかなる問題ではなさそうだ。こればっかりは施設の管理体制に委ねるしかなさそうだ。
【レジオネラの由来】
ところでレジオネラ菌ってどうして「レジオネラ」っていうのだろう。アメリカの退役軍人会(The American Legion)から来ているとのこと。菌と退役軍人とどう結びつくのか不思議だけど、これはその菌の発見と深いかかわりがあった。それは、1976年7月のこと、ペンシルベニア州南東部にあるフィラデルフィアのホテルで退役軍人会が開かれた際、参加者のうち182人が体調の変化を訴え、146人が入院。肺炎を引き起こして29人が亡くなってしまったとのこと。その原因はホテルの空調用冷却塔の中の水がレジオネラ菌に侵されていて、そのエアゾルを吸い込んでしまったことによるのだそう。ちなみに、アメリカ軍の退役軍人会は、現役を退いてはいるものの予備軍的に構成された組織になっているそうで、ただ単に退役した軍人と混用しないように「在郷軍人会」とも呼ばれるそうな。
まとめ:
今回はちょっと怖い話になってしまったけれども、温泉は気分よく清潔的に楽しみたいもの。もとより温泉で健康を損なってしまっては元も子もない話。温泉に限らず、日常的に気をつけなければならないリスクだということを理解しておこう。
参考資料:
国立感染症研究所 (https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ra/legionella/392-encyclopedia/530-legionella.html)
厚生労働省 レジオネラ症 (https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00393.html)
千葉県 レジオネラ症とその予防対策 (https://www.pref.chiba.lg.jp/eishi/koushuueisei/shisetsu/rejionera.html)
ウィキペディア レジオネラ (https://ja.wikipedia.org/)