沖縄県
みつばゆ
三葉湯
郷愁を誘うほどの鄙びた風情が情緒を演出
三葉湯は具志川市安慶名にある素朴な銭湯です。沖縄県では温泉はもとより普通の銭湯でさえもとても珍しい存在です。そんな数少ない銭湯でありながらも、昔ながらの素朴な存在であり続ける銭湯があるということで行ってきました。電話帳の住所を頼りに近づいていきますが、どうやら商店街の裏の方にあるようです。沖縄銀行の近くにありましたが、通りから一歩中に入った少々わかりづらいところでした。商店の裏に抜けると鉄筋のかなりくたびれている小さな建物に「みつば」の文字が見えます。暖簾が揺れているので営業しているようです。さっそく暖簾を潜るとすぐに番台です。すぐというより目の前です。暖簾を退けきれないうちに番台があったのでびっくりしました。浴室の入口は左が女湯で右が男湯になっていました。質素な扉を開けて中に入ると、靴棚がありその奥に板張りの脱衣所があります。そして壁や仕切りもなく浴室がありました。板張りの床は歩くとミシミシと音が鳴り、かなりボロいことがわかります。まさか鴬張りではないでしょうからね。でもその音がとても懐かしく心に響きます。脱衣棚は木製でよく見るとすべての棚に扉があった形跡がありますが、今はその一枚たりとも残ってはいません。故意に外したのかもしれませんが、とにかく古いんだなぁという印象を受けました。浴場は脱衣場のすぐ目の前で、コンクリートそのままの床でこちらもかなり質素な作りです。浴場は中央に長方形の湯舟がひとつ。まわりの壁には水と湯の蛇口が並んでいます。湯舟はタイル張りのようですが、ほとんど剥がれてしまって下地が剥き出しになっているところが目立ちます。残っているタイルにも湯垢というのか、長年の堆積物がこびりついていて、年季を感じました。湯は窓からニョキッと湯舟の脇まで延びているパイプからチョロチョロと注がれていました。湯舟の湯はかなりぬる目だったのですが、バルブをひねると熱い湯が注がれるので、これで温度調節ができるようです。湯舟はわりと深めで股下ぐらいまであります。のんびりと過ごしていると何故かノスタルジックな気分になってきます。天井などは半分朽ちていて崩れかかっています。とても頼りなさげな補強がしてありますが、ちょっとした地震でも崩れてしまいそうな恐怖感を覚えます。それにしてもここは何が出てきてもおかしくないような雰囲気で、しばらく貸切状態で誰もいなかったのですが、後から客が入ってきたときには「デタァーッ」って感じでびっくりしました。沖縄に限らずいまどき、こういったお風呂屋さんはなかなか見かけなくなりました。そんな稀な存在ながらもどことなく沖縄の風土を感じる無機質さがなぜか気に入りました。
掲載: 2006/01/15
Data
- 所在地:沖縄県具志川市安慶名
- 入浴 :2005年12月
- 泉質 :温泉ではありません
- 形態 :公衆浴場 男女別
- 露天風呂:なし
- 脱衣所:あり
- 開放度:☆
- 清潔度:☆
- 気軽度:☆☆
- 下町度:☆☆☆☆☆
- 穴場度:☆☆☆
- 鄙び度:☆☆☆☆☆
- 素朴度:☆☆☆☆
- 優雅度:
- 異色度:☆☆☆
- 景色 :
- 総合評価:☆☆☆
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