島根県
こやはらおんせん・くまがいりょかん
小屋原温泉・熊谷旅館
シンプル、素朴、そして濃厚な療養温泉
小屋原温泉は三瓶山の西麓、小屋原地区にある小さな温泉です。池田の集落から県道286号線に入って小屋原の集落を抜けた先の山の中にあります。熊谷旅館は山の合間にポツンと建つ一軒宿で、まさに三瓶の秘湯と呼べるところです。小屋原の集落からちょっと細い道になりますが、しばらくすると看板が見えてきます。集落を抜けたあたりから細い道で山の中になるので、道を間違えたのではないかとちょっと不安になるほどです。やがてすぐに宿の建物が見えてきますが、これが意外にも鉄筋二階建てのしっかりとした建物でした。掘っ立て小屋みたいな古びたものを想像しがちですが、どうやら建て直されたものらしいです。特に何も飾らないシンプルな宿だけどそれがまた素朴でいい感じでした。浴室は玄関右手の奥にあります。浴舎の扉を開けると廊下の右側に浴室が4つ並んでいました。しかし、この浴舎は先ほどの玄関と違ってかなり鄙びた様子です。浴室だけは昔ながらの湯治場という雰囲気が漂っていて、まさに秘湯そのものといった感じです。浴室は男女の区別はなく、そのときに空いている浴室を貸切で利用する形になっていました。浴室はどれも小ぢんまりとしたタイプのもので、多少レイアウトの差はあるとしても、どれも同じような感じでした。脱衣所は棚が脇にあるだけのかなりシンプルなものです。他に余計なものも何もないのがかえって好印象でした。浴室の扉を開けると思わず生唾(なまつば)を飲んでしまうほど渋い湯舟が目に飛び込んできます。浴室は一段低くなっているので階段で少し下ります。浴室はとても小ぢんまりとしたもので、やはりここでも湯舟とカランだけで、余計なものは何もありません。湯舟は木製のものだけど、かなり年季が入っているようで縁などは少し崩れているところもあるほどでした。脇の木製の湯口から湯が注がれていますがこれが38度ほどとかなりぬる目の湯です。そのためか湯舟の湯もけっこうぬるいです。注がれた湯はそのまま溢れて、掛け流し状態になっています。静かに流れる湯の音だけが響き渡り、ゆっくりと時を刻んでいるかのような格別なものを感じます。それとまた溢れ出た湯は床に堆積物による奇怪な模様をつくって、これがまた渋さが倍増させていました。注がれている湯は無色透明なものですが、湯舟では空気に触れて薄く濁っていました。そして湯舟に浸かると底からモワッと赤茶色の沈殿物が舞い上がってきます。なんとなく金気臭のある湯で湯口からすくって飲んでみるとすっぱいようなしょっぱいような、そして甘いようなとても複雑な味でした。鉄釘を舐めた味を薄くしたようなイメージでしょうか。口の中ではじける感じがするのは炭酸を含んでいるからのようです。湯舟に浸かっていると体にも気泡がまとわりついてきます。けっこうぬるいのですが、しばらく浸かっていると炭酸効果なのか暖かく感じます。それでも冬場はつらいかもしれません。しかし脇の蛇口をひねると熱い湯が出るのでこれで温度調整ができました。とにかくこの素朴さといい渋さといい、都会の喧騒を忘れてのんびりと過ごしたい宿です。
掲載: 2006/10/15
Data
- 所在地:島根県大田市三瓶町小屋原
- 入浴 :2004年12月
- 泉質 :含二酸化炭素、ナトリウム、マグネシウム、塩化物、炭酸水素塩泉
- 泉温 :源泉37.6度
- PH :6.0
- 形態 :温泉旅館 貸切制
- 効能 :神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばりなど
- 露天風呂:なし
- 開放度:☆
- 清潔度:☆☆
- 気軽度:☆
- 穴場度:☆☆
- 鄙び度:☆☆☆☆☆
- 秘湯度:☆☆☆☆☆
- 素朴度:☆☆☆☆☆
- 異色度:☆☆☆
- 湯治度:☆☆☆☆☆
- 景色 :☆☆
- 総合評価:☆☆☆☆☆
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