島根県
ちはらおんせん・ちはらゆんだにとうじば
千原温泉・千原湯谷湯治場
療養・湯治に絶大な信頼のある秘境温泉
千原温泉は島根県の中でも秘湯中の秘湯として密かな人気を誇る素朴な温泉です。国道から県道、そして山道に入ってから4キロほど進むと、山の中にポツンと一軒宿が見えてきます。途中に看板がありますが、道を間違えると迷いそうなのでしっかりと下調べしてから向かうのが無難です。以前は療養を目的とした湯治客しか受け入れなかったという本格的な湯治場で、今でものその風格がうかがえます。玄関に向かうと、ここでは受付の際に名前を記入するノートが置かれています。湯治客専用の温泉だったこともあり、数年前までは健康な人は追い返されたそうですが、現在の湯守になってから一般の温泉客も受け入れるようになったそうです。近くに観光スポットもなく、交通の便の悪く設備も簡素なものだけなので、わざわざ訪れる客は何かしら療養効果を期待しているものとの考えから多くの方を受け入れているそうです。浴舎の入口は受付の奥にありました。廊下を進んで奥に行くと浴室入口があります。カーテンで区切られただけの簡素な壁で男女別にわかれています。建物の外観はそれほど古くも感じさせなかったのですが、浴舎の方はけっこう鄙びたムードが漂って湯治場情緒を感じさせてくれていました。脱衣所で衣服を脱いで木の扉を開けると、すぐ目の前には昔ながらの五右衛門風呂を利用した上がり湯がありました。浴室はとても狭く、質素で鄙び加減がいっそう秘湯ムードを盛り上げています。奥にある湯舟は木製で、赤茶色に濁った湯があります。底からポコポコと気泡浴のように泡が立っていますが、これは人工的な気泡装置ではなく真下に泉源があり、自然湧出した湯が直接湯舟になっているとのことです。湧出量はわかりませんが、排水溝を見るかぎりけっこうな量が湧いているようです。湯舟の湯はとてもぬるいけど不思議と寒くは感じません。妙にサッパリとした湯で、飲むとすっぱいようなショッパイような微妙な味がありました。飲泉は、隅に小さな穴があり、用意されているガラスのコップで汲んで飲みます。湯舟の周囲は温泉成分の堆積によるものか、クリーム色っぽくコーティングされています。ぬるい湯に浸かりながらボーッとしていると、ついうたた寝してしまいたくなるほどです。このときは先客がひとりいただけで、上がるまで貸切状態でした。雪の積もった日に訪れたので、山は静まり返りまさに静寂に包まれた感じでした。何かとストレスの多い現代社会においては、たまにはこういう温泉で何も考えずに湯に浸かるのが最大の癒しになるように思えます。今では誰でも気軽に立ち寄れる温泉ですが、療養で来ている人が多いのでくれぐれもマナーは守って気持ちよく利用しましょう。
掲載: 2006/10/21
Data
- 所在地:島根県邑智郡美郷町千原
- 入浴 :2004年12月
- 泉質 :含二酸化炭素-ナトリウム、塩化物・炭酸水素塩泉
- 泉温 :源泉34.5度
- 形態 :湯治場 男女別
- 効能 :切り傷、やけど、慢性皮膚病、神経痛、冷え症、筋肉痛、関節痛など
- 露天風呂:なし
- 脱衣所:あり(簡易)
- 開放度:☆
- 清潔度:☆☆
- 気軽度:☆☆
- 穴場度:☆☆
- 鄙び度:☆☆☆☆
- 秘湯度:☆☆☆☆☆
- 異色度:☆☆☆☆
- 湯治度:☆☆☆☆☆
- 景色 :☆
- 総合評価:☆☆☆☆
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