栃木県

てらやまこうせん

寺山鉱泉

濃厚な湯で安らぐ、閑静な湯治場
矢板インターからクルマで15分ほど、国道から県道に入りさらに細い道に入ると、周りは山と田んぼばかりが広がる長閑な風景になります。道もあぜ道のような車が1台通れる程度のクネクネとしたものになってきます。少々不安な気持ちを抑えながらも先へと進むと、突然瓦屋根の大きく立派な宿が見えてきました。ここは寺山鉱泉という一軒宿です。インターチェンジからも近く、市街地からもそんなに離れてはいませんが、秘湯ムードは満点です。しかしながらそんな秘境の立地なのだから、とても鄙びた宿なのだろうと想像していただけに、そのギャップのある建物にはびっくりしました。近年になって建て直したという感じで、まだ新しさも感じました。しかしながら鄙びていなくてはならない理由もないし、特別派手さもなく落ち着いた雰囲気だったので、印象は悪くありません。周囲は物静かなところですが、この山のすぐ反対側には寺山観音寺という古刹があるそうです。奈良時代に建てられ、県や国の重要文化財も多い名刹で、その参拝客が泊まる宿として寺山鉱泉も百年以上の歴史があるそうです。浴室は玄関を少し入った階段脇の先にあります。浴室の前までくると入口がひとつしかないので混浴なのかと思いましたが、扉の両サイドにそれぞれ男湯、女湯の文字があります。どうなっているのかと恐る恐る開けてみると、ひとつだと思われていた脱衣所は壁で区切られていました。やや狭い脱衣所で、棚にはカゴが並ぶだけの質素なタイプです。しかしながら清掃も行き届いていてとても清潔的です。浴室の扉を開けるとレンガの壁で囲まれたややせせこましさのある内湯がありました。奥には大人が二人でちょうどいいような小さな湯舟があります。この浴室も後から付けたような壁で仕切られていました。女湯側は外壁に窓があり、明るいようですが男湯は窓もないのでけっこう薄暗いです。赤いレンガの壁と銀色のステンレスの天井が燻製小屋のような印象を受けました。ここは鉱泉ということで沸かし湯になっていて、湯舟にはフタがしてありました。開けて入るとそこには黒光りしたコンクリートの湯舟に、赤茶色に濁った湯がありました。透明度は15センチほどのけっこう濃厚な湯です。壁にはブザーボタンがあり、とても気になります。これはぬるい時に押すと加熱してくれるそうです。また、加熱してちょうどよい湯加減になったらもう一度押します。でもこれはボイラーのスイッチではなく、宿の人に音で知らせるだけという、とても原始的な仕組みです。湯舟は小さいのですが女湯と繋がっているようで、仕切られた部分は鉄格子になっていました。湯舟に浸かると水面より上に大きな隙間があるので、相手側が丸見えになってしまうというとても大らかなところです。湯はその見た目に似合わずとてもサッパリしています。脇のパイプのバルブをひねると源泉と思われる水が出てきました。口に含んでみると独特な薄い酸味を感じました。例えるなら白ワインの甘味をなくして水で割ったような、とにかく薄い酸味です。この温泉の泉質上、石鹸は泡立たないということで、湯に浸かるのがメインになります。けっこう湯治利用に訪れる人も多いそうで、長期滞在する人もいるそうです。素朴ながらも、その素朴さが実にナチュラルで、その雰囲気がとても気に入りました。
掲載: 2007/02/10
Data
  1. 所在地:栃木県矢板市長井
  2. 入浴 :2005年8月
  3. 泉質 :明礬緑礬泉
  4. 形態 :鉱泉旅館 男女別
  5. 効能 :神経痛、リウマチス、胃腸病、婦人血の道など
  6. 露天風呂:なし
  7. 開放度:☆
  8. 清潔度:☆☆☆
  9. 気軽度:☆
  10. 穴場度:☆☆☆
  11. 鄙び度:
  12. 秘湯度:☆☆☆☆
  13. 異色度:☆☆☆
  14. 湯治度:☆☆☆☆
  15. 景色 :
  16. 総合評価:☆☆☆