静岡県
あたみおんせん・ふくしまやりょかん
熱海温泉・福島屋旅館
気分はタイムスリップ、文化財級温泉宿
熱海温泉は日本を代表する温泉地のひとつです。昭和の中期、高度成長期には新婚旅行のメッカとして知られ、また、歓楽街のある大温泉地としてとても賑わっていたそうです。それゆえ、100万ドルの夜景と呼ばれるほど、熱海の夜は煌びやかだったようです。ところが、バブル崩壊とともに熱海のバブルもはじけ、閑散とした温泉地として知られるようにもなりました。しかしながら、旅館も地域も試行錯誤をして、徐々に客足は戻りつつあるようです。そんな熱海駅から徒歩で15分ぐらい、市街地の中にある鄙びた温泉旅館が福島屋旅館です。熱海の下町とも呼べるような商店街の中にポツンと時代に取り残されたかのようにさりげなく佇む小さな旅館です。ついつい見過ごしてしまいそうな小さな玄関ですが、入浴料金の貼紙や天然温泉の幟 があるので、すぐにわかります。ここは温泉旅館なのですが、日帰りでの入浴客が絶えず、公衆浴場のような役割もあるようです。玄関を入るとすぐに受付があります。旅館業はまだ続けているのかどうかわからないような佇まいに驚きます。浴場は玄関正面左側を入ったところにあります。薄暗い怪しげな廊下を突き進むとすぐ突き当たりに浴場入口がありました。正面が男湯で右奥に女湯があります。脱衣場に入るとさらに鄙びた光景に一瞬怯みます。歩くたびにミシミシと軋む板間や、黒光りした棚、そしてカゴ。昭和の初期を彷彿させるようなタイル張りの流しに、極めつけは裸電球と、まるで郷土資料館の中なのかと思わせるような文化財級の鄙び加減です。ここはバブル時期でも変わらずに地味に温泉旅館として営業していたのでしょう。本当にタイムスリップしてしまったのかと思うような佇まいにびっくりしてしまうことでしょう。浴場は脱衣場よりも一段低くなったところにありました。正面には大きな湯舟があり、右奥には小さな湯舟があります。小さい方の湯舟は湯が入っていなくて、空っぽでした。洗い場のようなスペースは右奥にありますが、カランがちょっとあるだけでいいわけ程度のものです。浴室は非常に広々としていますが、その一角は壁があって、その中はどうやら女湯のようです。奥行きがどの程度あるのかわかりませんが、女湯の方が少し狭い気がするのですが、どうなのでしょう? それにしても浴室の雰囲気もまた驚くほど鄙びていて怪しげです。でも汚らしさというのはあまりなく、古びた雰囲気がとても上品に感じました。湯は無色透明で、角にあるパイプからドボドボと注がれています。掛け流しになっているようで、溢れ出る湯もまた大量で見応えがあります。湯舟はとても広いのですが、深さもそれなりにあって、非常にダイナミックな印象です。注がれる湯を舐めてみると、薄いながらも塩味を感じます。温度もぬるくなく熱くなくちょうどいい感じでした。手足をおもいっきり伸ばして、のびのびと浸かることができました。質素で鄙びていて、素朴さのある温泉ですが、それがまた非常に個性的で雰囲気がとても気に入りました。
掲載: 2010/06/19
Data
- 所在地:静岡県熱海市銀座町
- 入浴 :2009年10月
- 形態 :温泉旅館 男女別
- 露天風呂:なし
- 開放度:☆☆
- 清潔度:☆☆
- 気軽度:☆
- 地元度:☆☆☆
- 穴場度:☆☆☆☆☆
- 鄙び度:☆☆☆☆☆
- 異色度:☆☆☆☆
- レトロ度:☆☆☆☆
- 総合評価:☆☆☆☆
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