東京都
いずみゆ
泉湯
薪で沸かした柔らかく肌にやさしい天然温泉
東京都墨田区、地下鉄押上駅から歩いて数分、住宅街の一角にある温泉銭湯が「泉湯」です。もともとは普通の銭湯として営業していたそうですが、平成14年(2002)に分析したところ温泉法に適合することがわかったのだそうです。以来、温泉銭湯として人気のスポットとなっているようです。駅からは近いのですが、大通りから一歩入ると住宅地となってけっこう静かな雰囲気があります。だいたいの場所を見当つけて歩いていくと、木造パレットがうずたかく積まれたコインランドリーを発見しました。パレットは古びているので、湯を沸かすための薪として利用できそうですし、銭湯とコインランドリーは併設しているところも多いので、このあたりに銭湯の気配を感じます。角を曲がってまわりこむと、憶測どおり銭湯の入口がありました。入口には温泉分析表が誇らしげに掲げられ、幟と一緒に天然温泉だということをアピールしていました。玄関は昔ながらの木札の下足箱になっています。自動ドアを入ると小さなロビーがあって、番台を挟んで右が男湯、左が女湯の入口となっていました。湯銭を払って中に入ると、天井の高い昔ながらの脱衣所がありました。脱衣棚は簡易的な鍵のかかるタイプです。素朴ながらも生活感の漂う雑多な雰囲気もありました。ガラス戸の奥は浴室です。浴室は手前側中央のシマと、両サイド壁際が洗い場となっています。浴室の奥が湯舟となっていて、大きな壁画があります。2階吹き抜けぐらいの高い天井で、浴場そのものは広くないのですが、開放感のある浴場です。洗い場は湯水のカランと上部に固定シャワーのあるオーソドックスなスタイルです。湯のカランが斜めになっていたので、ガタついているのかと思ったら、全てのカランがそうだったので敢えて角度を設けているみたいですね。男女を仕切る壁にも壁画が描かれていて、浴室内はシンプルながらも華やかな雰囲気がありました。仕切り壁は平野部というか高原のような風景画で、メインの壁画は山岳地の風景画のようでした。湯舟はそれほど大きなものではありませんが、左右2つに区切られています。左側は深い湯舟となっていて、ジェット噴流の付いた座湯になっています。右側は寝湯が隅にあり、ジェットとバブルの付いた湯舟となっています。天然温泉ということですが、都内に多い黒湯ではありません。無色透明の湯で、微妙にツルッとする以外はほとんど浴感はなく、温泉らしさは感じませんでした。湯舟脇のコックを捻ると冷たい水が注がれますが、何となく普通の水道水とは違うような独特の風味がありました。ただ、やはり温まるような感覚は持っていて、とても柔らかく包み込むような印象もありました。少し熱めの湯でしたが、薪で沸かした湯ということで肌にやさしい湯と評判のようです。真冬の寒い時期に訪れましたが、なるほど浴後もしばらくポカポカとして、気持ちよく家に帰ることができました。都内とはいえ、地方の共同湯にも似たローカルな雰囲気が銭湯にはあります。こういった素朴な銭湯の文化が、いつまでも残っていて欲しいと願うのでした。
掲載: 2010/10/03
Data
- 所在地:東京都墨田区業平
- 源泉名:楓
- 入浴 :2009年12月
- 泉質 :メタけい酸の項で温泉法の温泉に適合する
- 泉温 :源泉20.6度
- 湧出量:毎分230リットル
- PH :7.9
- 蒸発残留物:0.457g/kg
- 形態 :温泉銭湯 男女別
- 露天風呂:なし
- 開放度:☆☆
- 清潔度:☆☆☆
- 気軽度:☆☆☆
- 地元度:☆☆☆☆☆
- 穴場度:☆☆☆
- 素朴度:☆☆☆
- レトロ度:☆☆
- 景色 :☆
- 総合評価:☆☆☆
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