長野県
あんだいおんせん・あんだいかん
安代温泉・安代館
鄙びも愛嬌、ノスタルジックな老舗旅館
信州の湯田中渋温泉郷は、長野県を代表する一大温泉地です。一口に湯田中渋温泉郷とはいうけれども、実は10の温泉地が点在する温泉郷となっています。西から新湯田中温泉、星川温泉、穂波温泉、湯田中温泉、安代温泉、渋温泉、沓野温泉、角間温泉、上林温泉、地獄谷温泉とあり、安代温泉は湯田中温泉と渋温泉の間にある小さな温泉地です。湯田中温泉と渋温泉とは少し離れているので、渋温泉に隣接したような感じです。隣接といってもその境がわからないほどで、渋温泉の有名な石畳の路地の最初の部分は、実は安代温泉なのです。そんなわけで、石畳に入って暫く入ってから、「ここから渋温泉」と看板がでているのでわかります。安代館は、その中でも入口に近い位置にある老舗の温泉旅館です。明治時代に建てられたという古めかしい木造建築で、どこか郷愁の漂う佇まいです。もちろん年季が入っているのでボロという印象もありますが、この趣きは落ち着いています。実は安代温泉には地元民か安代温泉宿泊者しか入れない外湯があるということで、今回は外湯目的で宿泊しました。それに加えてこの宿にもなかなか情緒ある温泉があるということで、こちらも楽しみです。温泉街に入るとちょっとして宿が見えてくるのですぐにわかります。それにしてもノスタルジックな雰囲気が温泉街に漂っています。そのすぐ先は渋温泉なのですが、なんとなく雰囲気が違うような気がしますね。宿に入ると玄関がありますが、棚にも並べず床に広げた土産物など、なんとなく雑多な雰囲気があります。ただでさえローカルな雰囲気が、どこか田舎の親戚のうちにでも来たかのようなアットホーム的な空気が流れていました。受付の手前、ミシミシと音の鳴る階段を上がると2階ですが、その左奥に行くと「竜宮風呂」、右手の先に行くと「古代風呂」があります。竜宮風呂は男湯ですが、夕食後は男女が反転して女湯になります。そんなわけで宿泊すると両方の浴場を利用することができるのです。まずは竜宮風呂に行ってみます。素朴な脱衣所で質素な棚が並んでいました。全体的に質素な印象を受けるのですが、よく見ると質素なのではなく鄙びているのです。それなりに豪華なものでも、時代の流れには逆らえないのですね。浴室はタイル張りでシンプルなスタイルでありながらも、流線形の滑らかなカーブを描く湯舟が映えます。湯舟のど真ん中に柱が建っているのも奇妙ですが、なかなかユニークですね。湯は透き通るような無色透明で綺麗です。トロトロと溢れているので触ってみると、これがまたとんでもなく熱いです。湯舟の湯も熱くて触れないほどだったのですが、かき混ぜ棒があったので湯もみをすると、底の方はそうでもないようでなんとか入れるような熱さになりました。ジーンとしびれるような熱さでも、肌に染み込むような、そして馴染んでいくような柔らかな感触があり、湯の質の良さがわかりました。熱いのでそんなに長くは浸かっていられないけど、とにかく汗が噴き出しすっかり汗だくになってしまいました。もうひとつの古代風呂は、浴場までのアプローチも面白いです。浴場入口の目の前に赤い欄干の太鼓橋があるのです。昭和初期から変わらずあるとのことですが、遊び心が感じられて面白いものですね。こちらの浴場は先ほどのよりも少し広めです。手前に小さな木造の湯舟があり、奥にはカマボコを横にしたような形の小さな湯舟があります。浴室が広々としているのでゆったりとした雰囲気がありました。またどちらの湯もめちゃくちゃ熱いです。木造の湯舟は底の方まで熱湯だったので加水しないとムリなようです。もちろん加水しないと入れないのですが、なんだかもったいない気がして躊躇してしまいますよね。それにしても、この宿は雰囲気がいいです。確かに古いというかボロな部分も多いし、それを綺麗に見せようと取り繕ってもいないのに、なんだかそれが逆に郷愁を誘っていいのかもしれませんね。また是非遊びに来たい宿となりました。
掲載: 2011/04/09
Data
- 所在地:長野県下高井郡山ノ内町平穏
- 源泉名:共益会11号ボーリング
- 入浴 :2010年8月
- 泉質 :ナトリウム−塩化物・硫酸塩温泉
- 泉温 :源泉93.0度
- PH :8.3
- 形態 :温泉旅館 男女別(貸切可)
- 露天風呂:なし
- 開放度:☆☆
- 清潔度:☆☆
- 気軽度:☆☆
- 穴場度:☆☆☆
- 鄙び度:☆☆☆☆
- 異色度:☆☆☆
- レトロ度:☆☆☆
- 景色 :☆
- 総合評価:☆☆☆
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