岩手県
みやたおんせん・みやたおんせんほようじょ
宮田温泉・宮田温泉保養所
キツネの開湯伝説が残る素朴な温泉
一戸町の静かな山里にポツンとある宮田温泉保養所は、鄙びた雰囲気が妙にノスタルジックに感じる素朴な温泉施設です。県道からちょっと入った田園地帯にあり、国道や幹線道路からは離れていることもあってか、とても辺鄙なところに感じます。夏休みを利用した旅行の際、近くを通りかかったので行ってみることにしました。地図にはしっかりと温泉マークがついていたのですが、温泉街のような雰囲気はなく、ほんとにポツンと仮設のプレハブのような公民館のような建物があるだけです。一見すると温泉施設には見えないのですが、トタン屋根の上に大きな看板があるので、わりと目立っていて、近くまでくればすぐにわかります。駐車場にクルマを停めて、いざ館内に入ろうと向かいますが、玄関だろうと思った方には入口がありません。すると窓からおじさんが顔を出して、こっちだよと指示されました。建物の左側に玄関があったようです。館内に入ると、ちょっと寂れたような、昭和の香りがプンプンと漂う懐かしい雰囲気があります。田舎の親戚のうちにでも遊びにきたような、郷愁を感じさせる佇まいです。浴場はその奥にあり、無料の広間休憩室、それから有料の個室休憩室があるようです。真夏の真っ昼間に訪れたのですが、番人のおじさん以外に人の気配はなく、貸切状態のようです。静かな夏の昼下がりといった雰囲気もまた、田舎らしくていいですね。脱衣所は簡素な棚にカゴが並び、そして壁には「笑う門には福来たる」と書かれた標語が微笑ましく掲げられていました。浴室は石畳の床でカランが5つ、湯舟はひとつといった質素なスタイルですが、緑と赤の縦縞の壁が妙にカラフルです。ドギツイというほどではありませんが、妙な派手さがミスマッチで、それがまた個性的にも感じます。湯舟の湯は無色透明ですが、湯舟付近の床はエスプレッソコーヒーの泡のような色をした堆積物で覆われています。温泉の成分によるものなのでしょうね。角にある湯口とは別に蛇口から源泉がチョロチョロと注がれています。源泉は止めないでと書かれているので、これは源泉なのでしょう。脱衣所にも飲まないでと書かれていたので、かるく味見する程度にしてみましたが、微妙に塩味を感じるマロヤカな湯です。また、ツルツルとした浴感もあるので肌触りもいいです。湯舟の温度は40度ほどとけっこうぬる目だったのですが、真夏なのでちょうどいい感じでした。あがってしまうのがもったいないと感じるほど、素直に気持ちいい湯です。浴室内は温泉臭とは別に鉱物っぽい臭いというか、油っぽい臭いがたちこめていました。外のボイラーの臭いが入り込んでいるのでしょうね。沸かして利用しているようです。ちなみに駐車場前の壁には「キツネの湯」伝説というのが書かれていました。傷を負ったキツネが傷を癒しているのを見て発見したという開湯伝説ですね。古くから薬効高い湯として知られていたみたいで、こういう風に素朴なまま引き継がれているのは、地元の人々に親しまれている証拠ですね。いい温泉だと素直に感じる湯でした。
掲載: 2014/10/26
Data
- 所在地:岩手県二戸郡一戸町月舘
- 源泉名:宮田温泉(一号泉)
- 入浴 :2013年8月
- 泉質 :ナトリウム−炭酸水素・塩化物泉
- 泉温 :源泉38.3度
- 湧出量:毎分7リットル
- PH :7.1
- 蒸発残留物:3.225g/kg
- ラドン含有量:1.12×10-10キュリー・ラドン/kg
- 形態 :公衆浴場 男女別
- 効能 :切り傷、やけど、慢性皮膚病、虚弱児童、慢性婦人病など
- 露天風呂:なし
- 開放度:☆☆
- 清潔度:☆☆
- 気軽度:☆☆
- 地元度:☆☆☆☆☆
- 鄙び度:☆☆
- 異色度:☆☆☆
- 景色 :☆
- 総合評価:☆☆☆
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