福島県
とくさおんせん・いわぶろ
木賊温泉・岩風呂
千年にわたり村人が守り続けてきた大地の恵み
福島県南会津町、静かな山間にある木賊温泉は、平安時代の治暦元年(1065)に発見されたという開湯伝説がある老舗の温泉地です。植物のトクサが群生していたことから、温泉名がついたとのことで、緑豊かなとても静かな雰囲気があります。とても辺鄙な山の中ですが、小さな集落には旅館や民宿がいくつかあり、静養向けの情緒漂う人気の温泉地です。ここは私が小学生だった頃、林間学校で来た記憶があります。それこそ数十年ぶりに訪れることになりました。渓谷沿いに素朴な共同浴場があるということで、期待に胸を躍らせながらやってきました。温泉街を貫く通り沿いに数台の駐車場があり、そこの脇から渓谷に降りていくようです。細い山道を下っていきますが、林に囲まれ街灯もありません。夜間はとても怖いとのクチコミがありましたが、なるほどこれはかなりワイルドですね。しばらく下っていくと道が二股に分かれ、上が温泉神社、下が共同浴場となっています。浴場といっても、簡易的な囲いと屋根がついているだけのすごく質素なものです。澄んだ川の流れのすぐ脇にその浴舎がありました。度々台風被害を受けているそうですが、なるほどこのロケーションだとひとたまりもないでしょう。建物の入口に料金箱が設置されていて、管理人は不在ですが各自で料金を投入して利用するシステムとなっていました。建物に入るとすぐ山側は湯舟です。崖の岩肌をそのまま利用した湯舟で、大人が3〜4名ほどでいっぱいのわりと小ぢんまりとしたものです。そして岩を挟んでその奥にも湯舟があります。こっちはもう少し大きめのもののようです。足場はコンクリートでしっかりと整備されていますが、ありのままの素朴な雰囲気がとてもいいです。川側には棚があり、そこが脱衣スペースとなっていました。ちなみにここには男湯、女湯の区別はありません。そうなんです、混浴なのです。この大らか過ぎるロケーションではさすがに女性には厳しいでしょう。ということで、手前入り口脇に女性専用の脱衣場が設けられていました。ちなみに女性に限り、湯浴着の着用が認められていて、近隣の商店や宿なのでレンタルもあるようです。さっそく衣服を脱いで湯舟に浸かります。まずは手前側の湯舟から入りましたが、とても快適な温度です。ほぼ無色透明の綺麗な湯で、軽くつるりとした滑らかな浴感がありました。また、かすかに硫化水素のような匂いも感じました。自然のままの温泉のようですが、温度が絶妙すぎます。湯は奥の湯舟からのオーバーフローのようなので、続いて奥の湯舟に移動してみます。こちらは手前よりも若干温度が高めでしたが、すごく快適な温度には違いありません。こちらは湯はどこからも注がれていませんが、どんどん溢れ出ていっています。なんと湯舟の底から直接湧き出ているようです。奥側の足元岩の隙間に手を入れると、熱い湯が出ているのが感じられました。これはまさに大地の恵みそのものですね。平日の真っ昼間に訪れましたが、最初数組の先客がいましたが、彼らが上がってしまうとずっと貸切状態でした。川のせせらぎも湯舟に浸かりながら感じられ、あとは鳥の囀りと谷間を抜ける風の音だけです。すごく静かで優雅な気分になれました。あまりの快適さに、ここから離れなくなくなってしまうほど気に入ってしまいました。また機会があれば訪れようと思います。
掲載: 2019/10/08
Data
- 所在地:福島県南会津郡南会津町宮里
- 入浴 :2019年6月
- 泉質 :単純硫黄泉
- 泉温 :源泉44.8度
- 形態 :共同浴場 混浴
- 脱衣所:あり(女性専用あり)
- 開放度:☆☆☆☆
- 清潔度:☆☆☆
- 気軽度:☆☆☆
- 野趣度:☆☆☆☆
- 秘湯度:☆☆
- 素朴度:☆☆☆☆☆
- 異色度:☆☆☆☆
- 人気度:☆☆☆☆
- 景色 :☆☆☆☆☆
- 総合評価:☆☆☆☆☆
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