福島県
ふかざわおんせん・むらゆ
深沢温泉・むら湯
パノラマ景色と、強烈な苦味渋みの個性派温泉
梅雨入りで不安定な天候が続く日々、気晴らしに只見町にある深沢温泉に行ってきました。ここは国道289号線沿いの高台にあります。只見町は緑豊かな山間の町です。深沢温泉は町や集落の近くにあるのだと思っていたのですが、辿り着いてみると多少の民家は近くにあるものの、とても長閑な場所にポツンとあるのでした。ポツンといっても、けっこう規模の大きな場所です。国道沿いとはいいながらも、ちょっと坂道を登って高台の上に行きます。すると木造の素朴なスタイルの「むら湯」。そしてその奥にはゆったりとした大きな宿泊施設の「季の郷 湯ら里」があります。この一帯が総合施設になっているようです。むら湯は、こぢんまりとはしながらも広間の休憩所で食事もできる日帰り温泉施設です。駐車場はとても広いのですが、訪れた時期が中途半端だったからなのか、週末だというのにガラガラです。これはチャンスとばかりに館内に入ります。すると下足箱のすぐ先に受付があり、入浴券の自動券売機がありました。JAF特典などの優待は直接窓口で支払うようです。館内は、正面に小さな休憩所、右奥へと行くと浴場、左奥は大広間の休憩所兼食事処となっていました。脱衣所は意外と小ぢんまりとしています。棚に大きなカゴが並んでいました。そして浴室に入ると、こちらも小ぢんまりとした内湯です。洗い場は手前側に左右合わせて五つほど、正面の窓側に湯舟がひとつだけあります。そんなとてもシンプルなスタイルなのですが、非常に開放的で優雅な雰囲気です。というのも正面は大きなガラス窓になっていて、外の景色が見えるのですが、高台にあるので見晴らしがとてもいいのです。国道を見下ろすように眺め、正面には田んぼ、そしていくつかの集落、そして集落の背後にそびえる山々。自然いっぱいの田舎景色が一望できるのです。絶景という景色ではないものの、この長閑な景色を俯瞰的に眺めるのは、ジオラマや鉄道模型を見るのと同じように心が安らぐ気がします。そして何よりも驚いたのはこの温泉です。湯舟には赤茶けた濁った湯で、湯舟の周囲はその温泉の堆積物で赤褐色に見えます。透明度は50センチほどでしょうか。またそれどころか、手前側の床一面がそんな赤褐色の堆積によって凸凹になっているのです。どんだけ濃厚な温泉なのでしょう。温泉は源泉をそのまま掛け流しだそうで、日によって温度も違うようです。とはいいながらちょっと熱いかなってぐらいのちょうどいい温度です。湯舟から溢れ出る湯はそのまま外に流れて排水されていました。注がれる湯を口に含んでみると、「おっ、しょっぱいかな」と思った次の瞬間、苦味というか渋みがジワジワと効いてきます。これがいつまでも続く渋みで、かなり強烈なものです。それにしてもこの贅沢な温泉の使い方には感動します。ちなみにすぐ隣の宿泊施設の温泉は、鉄分とマンガンを除去してしまっていて、まったくの無色透明無味消毒臭になっています。この素晴らしい泉質を味わいたいのなら、迷わすこちらを選ぶべきでしょう。
掲載: 2019/10/17
Data
- 所在地:福島県南会津郡只見町長浜字上平
- 入浴 :2019年6月
- 泉質 :ナトリウム−塩化物・硫酸塩泉
- 泉温 :源泉47.5度
- 湧出量:毎分79リットル
- PH :7.3
- 蒸発残留物:8,080.0mg/kg
- 形態 :公衆浴場 男女別
- 効能 :切り傷、やけど、慢性皮膚病、虚弱児童、慢性婦人病など
- 露天風呂:なし
- 開放度:☆☆
- 清潔度:☆☆☆
- 気軽度:☆☆☆
- 地元度:☆☆☆
- 秘湯度:☆☆
- 素朴度:☆☆☆☆☆
- 異色度:☆☆☆
- レトロ度:☆☆☆☆
- 景色 :☆☆☆☆
- 総合評価:☆☆☆☆
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