熊本県
やまかわおんせん・やまかわおんせんきょうどうよくじょう
山川温泉・山川温泉共同浴場
山里の静かな集落に佇む素朴な共同浴場
熊本県の北部、わいた温泉郷のすぐ南にあるひっそりとした温泉が山川温泉です。仕事の疲れを癒そうと休暇をとって月曜日の朝から向かったのは、山里の小さく素朴な集落の中にひっそりと佇む、山川温泉の共同浴場です。この前をたまたま通りかかることもないでしょうが、たとえ通ったとしても知らなければ見過ごしてしまいそうなほど、さりげなく佇む素朴な共同浴場です。そうなってくると、地元専用の浴場なのかと思いきや、ありがたいことに一般にも開放されてくれている浴場で、通り沿いには料金の案内の看板も掲げられていました。屋根にはしっかりと「山川温泉共同浴場」と書かれていて、その存在を地味ながらもアピールしているようでした。道路からは一段下がったところに浴舎があり、建物の右側が男湯、左側が女湯となっていました。扉を開けるとすぐに脱衣所があります。管理者は不在で、利用する際には脱衣所内にある料金箱に、指定する入浴料を入れて利用するようになっていました。小ぢんまりとした脱衣所には、棚とベンチのみで、備品としては扇風機と体重計が置いてあるぐらいです。本当に質素で素朴な雰囲気がありました。ガラス戸の先は浴室となっています。こちらもかなり小ぢんまりとした様子です。湯舟はひとつだけで、非常にシンプルな浴室です。しかしながら、湯舟は総御影石造りのしっかりとしたもので、チープさはまったくありません。むしろ、素朴ながらも重厚な印象です。男女を仕切る壁には「温泉医治効用書」と書かれた錆びついた案内板が掲げられています。昭和43年の温泉分析書に基づいて昭和48年に適応症と禁忌症を決定したことを証明したものだそうです。古びた感じがとても情緒と歴史を感じます。これによると泉質は「硫化水素泉」とのことです。詳しい分析表が見当たらないので、この情報だけが頼りです。トロトロと掛け流されている湯は、ほとんど無色透明の綺麗な湯です。軽く硫化水素の匂いがありますが、玉子臭というよりはガス臭い感じの匂いです。硫化水素が含まれているとはいえ、硫黄泉とは違う感じですね。湯舟から溢れ出ている湯が床を流れていきますが、けっこう熱い湯です。熱いといっても火傷するほどのものではありません。しっかりと掛け湯をすれば、問題なく浸かれる温度です。湯舟に浸かると、底の方は少しぬるめだったこともあり、むしろ熱めだけどちょうどいい温度かもしれません。ちなみに浴室内には、洗面器とイスは用意されてはいるものの、ボディソープなどの石鹸類が無いどころか、カランやシャワーなどの洗い場もありません。本当に素朴でシンプルな浴場です。それにしても浴室はそれなりに年季を感じるものの、湯舟はしっかりとしているし、非常に綺麗で清潔的な印象があったので、定期的にリフォームされているのかもしれません。でも、この素朴な雰囲気は、余計なものを感じずに素直に温泉と向き合えるので、すごく安心感がありました。しばらく浸かっていると、やはり熱いこともあって汗が噴き出てきます。これがまた気持ちいいんですよね。トロトロと注がれるパイプの口には、コップも用意されています。飲泉もできるようです。さっそく飲んでみると、酸っぱそうな酸性泉のような匂いがあるのですが、あれ?意外とマイルドです。硫化水素は多く含まれているようですが、酸性というわけでもなく、肌もむしろツルツルと柔らかい感触があるので、刺激も少なくて落ち着く湯でした。それにしても他に客もおらず、終始ずっと独占状態でした。のんびりとお湯の響き渡る音だけを聞きながら、何も考えずに入る温泉は、現在の世知辛い世の中ではなかなか味わえない贅沢品なのではないかと感じるほどでした。こういった地域に根付いた温泉文化が、未来永劫続いて欲しいと願うのでした。
掲載: 2023/09/27
Data
- 所在地:熊本県阿蘇郡小国町北里
- 入浴 :2023年5月
- 泉質 :硫化水素泉(単純硫化水素泉)
- 形態 :公衆浴場 男女別
- 効能 :高血圧症、動脈硬化、末梢循環障害、リュウマチス性疾患など
- 露天風呂:なし
- 開放度:☆
- 清潔度:☆☆
- 気軽度:☆
- 地元度:☆☆☆☆☆
- 穴場度:☆☆
- 鄙び度:☆☆
- 秘湯度:☆☆☆☆
- 素朴度:☆☆☆☆☆
- 景色 :☆
- 総合評価:☆☆☆☆
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