福岡県
はかたおんせん・がんそもとゆ
博多温泉・元祖元湯
住宅街にひっそり佇む情緒に富んだ素朴な温泉
九州は温泉天国と呼ばれるほど、温泉資源に恵まれている地域ですが、熊本、大分、鹿児島に偏って存在しているため、温泉資源の少ない地域もあります。それが北部にある福岡県です。福岡県には二日市温泉という奈良時代から続く老舗の温泉地がありますが、実は百年前までは唯一の温泉地だったらしいです。その後、掘削によって温泉があちこちにできてきたようです。それでもやはり福岡市内には温泉資源が少ないのは変わりありません。ところが、そんな福岡市の南区に博多温泉元湯という温泉を見つけました。調べてみると、すごく素朴な温泉ということで、さっそく向かうことにしました。場所は那珂川近くの住宅街の中にあるようです。天神大牟田線井尻駅から徒歩で15分ほどで行けるようです。さっそく歩いていくと本当に静かな住宅街の中に入っていきました。そして進んでいくと突如として素朴な温泉の建物が見えてきます。いや、温泉というより民家のような佇まいです。ただ、目の前には「博多温泉」と書かれた石碑があったり、看板には「元祖博多温泉元湯」と書かれています。気になるのは石碑の「博多」の文字の前に修正された跡があります。どうやらかつて「奥博多温泉」と呼ばれていたようです。温泉としての歴史はまだ浅く、昭和41年(1966)に井戸を掘って湧き出たのが始まりで、この施設も昭和44年(1969)に出来たものだそうです。ではさっそく浴場に向かいたいのですが、ちょっとあまりにもローカル過ぎて一般の方なら躊躇してしまいそうな佇まいです。脇にはお地蔵様が祀られていて、その奥にいくと民家のような玄関がありました。玄関を開けるとそこはすぐに番台がありました。料金を払うと、初めての利用ということで丁寧に説明がありました。すぐ手前側に浴場の入口があり、右側が女湯、左側が男湯とのことです。てっきり奥に浴場があるのかと思ったら、手前にあったのですね。ところが扉を開けるとすぐに脱衣場なのですが、めちゃくちゃ狭いです。二人が同時に着替えるのも憚れるほどの狭さです。それに加え、素朴な棚があるだけの質素なものです。そしてすぐ脇には浴室がありますが、こちらもまたものすごく狭いです。手前側に洗い場らしきスペースがありますが、ふたりでいっぱい。そして目の前には石組みの湯舟がひとつ。こちらも2〜3名ほどでいっぱいの大きさです。そして周囲は青い半透明の波板で簡易的に囲われているだけです。正面は先ほど通ってきた通路のようです。このすごく質素な佇まいには思わず圧倒されてしまいます。いや、でもものすごくローカルで情緒が溢れ出ています。他では味わえないような、独特の雰囲気と、ローカルで素朴な雰囲気が融合し、何ともいい雰囲気です。湯舟の脇には塩ビのパイプが通っていて、トロトロと湯が注がれています。湯舟の湯は無色透明の綺麗に透き通った湯です。掛け流されているようで、湯舟からどんどん溢れ出ていました。さっそく湯をかぶってみると、これがまたけっこう熱いです。体感で43〜44度くらいあるでしょうか。でも気持ちいいぐらいの熱さです。手前側にカランも何もなく、桶とイスしかないので、湯舟から直接桶で湯を汲んで利用するようです。石鹸類も用意はないので、持ち込む必要があります。体を洗い、掛け湯をバンバンして熱さに慣れたところで湯舟に浸かります。ドバーッと湯が溢れ出る感じがまた贅沢です。身が引き締まるように熱い湯も気持ちいいです。熱さもあるけどヒリヒリと刺激も感じます。なんとけっこう塩辛い湯のようでした。塩分を多く含む温泉のようです。そんなこともあって、ちょっと浸かっているとめちゃくちゃ熱くなりのぼせてきます。上がっても水もないので、とにかく空冷で冷やします。ちょっと休憩していると、突如として脇からプシューと豪快な音とともに湯と蒸気が溢れ出てきました。思わず何事かと思いましたが、定期的に高温のお湯が足されているようです。これもインパクトがありますね。そんなこんなで入浴と休憩を数回繰り返したところで上がることにしました。それにしてもこの素朴感は半端ありません。今時、こんな街中にもこんな湯があるんだなぁと感慨深くなりました。いつまでも残っていって欲しい、文化財級の温泉だと感じました。
掲載: 2023/10/18
Data
- 所在地:福岡県福岡市南区横手
- 入浴 :2023年6月
- 泉質 :含塩化土類食塩泉
- 形態 :公衆浴場 男女別
- 効能 :リウマチ性疾患、神経マヒ、神経症、虚弱児童、運動器障害など
- 露天風呂:なし
- 開放度:☆
- 清潔度:☆☆
- 気軽度:☆
- 地元度:☆☆☆☆☆
- 穴場度:☆☆☆☆
- 鄙び度:☆☆☆☆
- 素朴度:☆☆☆☆☆
- 異色度:☆☆☆☆
- 景色 :
- 総合評価:☆☆☆
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