鹿児島県
しのんだんことぶきゆ
篠段寿湯
レトロ感が半端ない山の中のいで湯
鹿児島の大隅半島をぐるりと巡ろうと計画を練っていると、曽於郡大崎町の山の中に「篠段寿湯」という温泉施設を見つけました。聞いたことのない施設だったので、どんなところか調べてみると、とてもレトロで秘湯っぽいということだけわかりました。興味が湧いてきたのでさっそく向かってみます。けっこう辺鄙な感じで、どんどん人里から離れているような気がします。やがて辿り着いてみると、そこには素朴な木造の建物がありました。ただ、あまりにも古臭く、そして人の気配もありません。単なる廃屋かな?と思いましたが、場所はここで間違いなさそうです。すると、奥から人が出てきて今日は定休日とのことでした。定休日まで調べてこなかった自分が悪いのに、申し訳なさそうにしていたのが、こちらこそ恐縮してしまいます。改めて翌日、再度訪れてみました。今度は先客もいるようで他にもクルマがありましたが、やはり静かです。どうもやはり正面にある古臭い建物が温泉施設のようです。まるで昭和初期の地方の小学校分校のような、古い映画に出てきそうな佇まいが郷愁を誘います。受付で料金を払いますが、浴場の入口はこの辺りには無さそうです。するとすぐ後ろの方で人の気配がしたので振り向くと、浴後の客が帰っていくところでした。ということで、その方の来た方へと向かうと、浴場の入口がありました。受付とは反対側の建物の端が入口でした。入口前の壁にはこの湯の説明が書かれていました。それによると江戸末期の慶應元年(1865)に瀬戸五右ヱ門という武士が、山で昼寝中に山の神からのお告げを受けて霊泉を発見したとのこと。その後、明治元年(1877)に湯治場がひらかれて今日にいたるとのことでした。それなりに歴史を感じる佇まいには意味があったわけですね。さっそく扉を開けて中に入ります。脱衣所はやはり素朴です。棚にカゴがあるだけで、非常にシンプルな感じです。扇風機もなく、その代わりに団扇が壁にぶら下がっていました。また、注意書きとして、湯治客が多いので塩素消毒はなく、そのため雑菌が繁殖しやすいので必ず体を洗ってから湯舟に浸かるように書かれていました。なるほど、これは大事なことですね。まぁ、塩素消毒があるにせよ、体の汚れは落としてから湯舟には入ってほしいものです。さっそく浴場に入ると、ちょうど先客の二名が上がる頃でした。浴場もかなりの年季を感じる佇まいで、このまま資料館にでも飾られていそうな文化財級の雰囲気を醸し出しています。外壁側には洗い場があり、奥の隅に小さな湯舟がひとつだけあります。浴室の広さのわりには狭い湯舟です。洗い場には一か所、シャワーもあったのは意外でした。湯舟の湯はほんの少し濁った感じのする湯です。見たところ湯舟へは湯の投入口が見当たりません。溜め湯なのか?と入ってみると、しっかりと熱い湯です。角にひとつだけ蛇口がありますが、こちらは水か出てきました。壁には「くすり湯」と書かれていて、その脇に「注意 湯出口↓」と書かれています。ちょうどその文字の下あたり、湯舟の中に湯の投入口があるようです。奥のボイラーから沸かした湯が投入されるのでしょう。このときは湯は出ていなかったので、ぬるくなったり少なくなったりすると出てくるのかもしれません。ちなみに水の蛇口には持ち帰り禁止と書かれています。これが源泉なのでしょうか? 味見をしてみましたが、少しミネラル臭いような気もしないわけではないが、特に気になるような味覚は無いように感じました。お湯も非常にあっさりとしていて、特筆するような感じもなかったように思います。ところが、入浴中はあまり感じなかったのに、浴後には体が微妙にミネラル臭いような気もしてきました。鉱泉の成分によるものですかね。そのあと、しばらく静かに浸かっていましたが、誰も来る気配もなく、とても寂しい感じでした。地元の方でも知らない人がいるなんてクチコミもあったので、まさに秘湯というのがぴったりの湯でした。雰囲気は格別に良かったので、また是非とも入りに来たいなと思いました。
掲載: 2024/09/05
Data
- 所在地:鹿児島県曽於郡大崎町野方
- 入浴 :2024年6月
- 形態 :公衆浴場 男女別
- 露天風呂:なし
- 開放度:☆
- 清潔度:☆☆
- 気軽度:☆
- 地元度:☆☆☆
- 穴場度:☆☆☆☆
- 鄙び度:☆☆☆☆☆
- 秘湯度:☆☆☆☆☆
- 素朴度:☆☆☆☆☆
- 異色度:☆☆☆☆
- レトロ度:☆☆☆☆☆
- 景色 :☆☆☆
- 総合評価:☆☆☆☆
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