長野県
とぐらかみやまだおんせん・とぐらこくみんおんせん
戸倉上山田温泉・戸倉国民温泉
レトロ感に包まれながらも名湯かけ流しの本格派
戸倉上山田温泉は千曲川沿いにある大きな温泉地です。温泉の発見は江戸時代後期ですが、温泉地として開発されたのは明治中期で、その後、長野県を代表する歓楽温泉街として発展してきました。バブル期には大型の温泉旅館やホテルが建ち並び、大変人気のある歓楽温泉街でしたが、バブル崩壊後は団体旅行から個人旅行への旅行スタイルの変化に対応が追いつかず、大型の旅館はどんどん淘汰されてしまい、戸倉上山田温泉もいつの間にか静かな温泉街へと変貌してしまいました。そんな時代の変遷を、何も無かったかのように昔ながらのスタイルでポツンと佇む温泉施設が、「国民温泉」です。いわゆる温泉銭湯ですが、これがまた本当に素朴な雰囲気で、地域の方々だけでなく観光客をも魅了しています。国民温泉は千曲川の右岸の住宅街の中にあります。入口の上には大きな文字で「国民温泉」と書かれていますが、かなり色褪せてきていて、とても年季を感じます。その下を進むと、突き当りに男湯、女湯の入口があります。今、通ってきた部分にも建物があるのですが、浴舎はこの奥の部分だけのようです。手前の部分は二階もあるようなのですが、何の施設なのでしょう? 不思議に思いながらも、中に入って靴を脱ぎ、昔ながらの番台に料金を払って進みます。脱衣所も壁側に簡易的な鍵の架かる木造ロッカーがあり、そして番台前には瓶の牛乳などが売られているなど、まさに典型的な銭湯のスタイルです。古風なスタイルではありますが、脱衣所の中央にはテーブルが置かれ、棚も少し新しくなっているなど、時代の移り変わりとともに、変化もしてきている様子です。浴室に入ると、男女を仕切る壁側に洗い場が並び、そしてひょうたんのように縊 れた形の大きな湯舟がありました。外窓側は曇りガラスになっていて、浴室内はとても明るい印象です。洗い場は上部に固定式のシャワー、そして湯のカランだけというかなりシンプルなものです。手前側のシャワーからは誰も使用していないのにジャンジャンと湯が出ていました。誰かが流しっぱなしにして忘れているのかと思いましたが、あきらかに故意で流しているように感じます。脱衣所のところには、源泉かけ流しの都合上、シャワーは流しっぱなしにしていると書かれていました。ということは、シャワーから湯舟まですべて温泉が利用されている様子です。さっそく体を流しますが、ツルッとした滑らかな感触がありました。そして湯舟にも浸かります。こちらはけっこうぬるめの湯でした。じゃんじゃん注がれていて、そして沢山溢れ出て床を流れています。まさにかけ流しですね。また、不思議な排出方法もしていたのですが、それは床に穴が開いていて、そこからモコモコと湯が出て床を流れていくのです。もしやと湯舟の中をさぐると、穴の近くの湯舟の底にも穴があり、そこを塞ぐと湯が止まります。どうやら底から汲み上げながら排出しているようです。そんな小さな穴が数か所ありました。湯はほぼ無色透明で、ツルッとして滑らかな湯です。湯口の上には透明のアクリル板が敷かれていて、その上にコップが用意されていました。飲用もできるようなので、さっそく飲んでみます。すると、ゴクゴクと飲めるほど違和感のない湯です。水道水よりもすごく軟らかく、臭みもないけど、微妙に硬さを感じる味がありました。浴室は内湯のみで、小ぢんまりとしているので、ぬるめの湯ながらもしばらく浸かっていると汗だくになるほど、よく温まりました。平日の午後にお邪魔しましたが、空いてはいましたが、貸し切りになるような瞬間はなく、入れ替わりはあるものの常に入浴客がいる状態でした。人気の高さがうかがえます。時代をタイムスリップしたような、懐かしい気分を味わえ、しかもかけ流しの湯を楽しめる、とても素晴らしい温泉施設でした。
掲載: 2025/11/10
Data
- 所在地:長野県千曲市戸倉
- 源泉名:戸倉国民温泉二号泉
- 入浴 :2025年6月
- 泉質 :アルカリ性単純温泉(低張性アルカリ性温泉)
- 泉温 :源泉39.3度
- PH :9.2
- 密度 :1.0002
- 蒸発残留物:0.250g/kg
- 形態 :公衆浴場 男女別
- 効能 :自律神経不安定症、不眠症、うつ状態など
- 露天風呂:なし
- 開放度:☆☆
- 清潔度:☆☆☆
- 気軽度:☆☆☆
- 地元度:☆☆☆☆☆
- 鄙び度:☆☆☆
- 素朴度:☆☆☆☆☆
- 異色度:☆☆☆
- レトロ度:☆☆☆☆
- 景色 :☆
- 総合評価:☆☆☆
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